宇 宙 観 を 思 索 し て 野 に 立 つ
 
 
 
 
 はじまり
 
 2008年夏、大阪城の南に位置する玉造という歴史ある地の一角で、陽当たりの良い雑居ビルとの出会いから始まった。
 およそ築50年の二階建ての小さな一棟のビル、大きい窓からは自然光撮影にちょうど良い光が入り、屋上では植物を育てることができる。
 写真とグラフィックデザインを仕事にしながらも、この先に何をして生きるのか、いずれは田舎で暮らしたいという道筋もあまり見えない中、何か新しいことを求めている頃の出会いだった。
 
 その年の秋、「木の足下には自然に草が生える」という当たり前の姿に感動して、その想いそのままに植物を創作する「KiKusa」を始めることになった。店舗を構え、「木」と「草」そのままを名前にして。
 
 
 
 心のよりどころ
 
 野山の木や草をそのままの自然な姿で植える鉢植え。
 乾いた植物が持つ繊細さの中にある力強さ、その美しさを形作った。
 乾いた植物の価値がまだまだ認められなかった時代、葉一枚、枝一本、花一本にも飾るだけの価値があるではと高い値を付けた。
 誰かが歩いた足跡も無い道を、手探りで野山の植物に向き合い続けた。
 
 ただ知れば知るほどにひとつの思いが強くなった。
 孤独と不安が広がり、人と神が共存しないこの時代に、植物の力が人の生きてゆく「心のよりどころ」になり得るのではないかということ。
 
 
 
 植物のアート
 
 2011年は変化の年だった。震災の後、世の中も自分たちの土台も一層不安定になった。
 何か上手くいかない時こそ新しい一歩を踏み出せると言うが、まさにその機会だった。
 手探りの模索を続ける中で思いきり舵を切ってみることにした。この植物の力をアートとして表現できるのではないか、思うままにやってみようと。
 
 2011年12月、画家マルク・シャガールのリトグラフ作品「ダフニスとクロエ」を題材に、ドライの紫陽花や野山の葉や実で表現した「48のリース 展」を自店にて開催。
 思った以上の反響と自分たちの手応えを元に、次年からの植物アート創作が始まる。
 2012年3月、世界で初めての写真集のタイトル「The Pencil of Nature(自然の鉛筆)」に着想を得て、草花の押し花と写真プリント作品の展示「自然の鉛筆 展」。
 同年4月には兵庫県篠山のギャラリー colissimoにて、森羅万象の命の物語を紡いだ「いのちのリース 展」を開催。
 同年6月には自店にて「形のない紫陽花リース 展」。同年11月に自店にて、印象派の技法を使って作る紫陽花リースの連作の展示「印象派 展」。大阪のBoulangerie le matin de la vieにて「ギリシャ神話のリース 展」。
 12月には大阪のMAISON GRAIN D'AILEにて「死せる自然 展」。
 
 続く2013年3月、平安和歌と落ちる葉の余情に焦点をあてた「落葉(らくよう) 展」は、自身の急な入院により開催中止の幻となった。
 復帰後4月に奈良の秋篠の森にて「KiKusa展-植物に宿るもの」。
 7月には大阪の自店での最後の展示となった「始まりと終わり 展」。
 そしてこの夏、一心に走り続けた大阪の店舗を閉めて、三重県の松阪の田舎へと移った。
 
 
 
 自然の近くで見えるもの
 
 田舎に移り生活が変わってきた。目の前には野山が広がる景色、刻々と変わる空や山の姿、草叢にしゃがみ込んだ子供の頃そのままの記憶。
 草に触れ、土に触れ、確かな世界がここにあることが大事だった。
 作り出すものも野山の草花や枝葉を使った作品へと変わってきた。
 
 三重、滋賀、大阪、名古屋などで展示を開催の後。
 2014年10月には大阪のMAISON GRAIN D'AILEにて、熊野の植物の野生が放つ面影を感じる「野生のけわい 展」開催。
 2015年5月に名古屋のTisane infusionと、7月に滋賀の&Anneにて「植物画 展」開催。
 2016年5月はMAISON GRAIN D'AILEにて、世界の果てにあるナゾを題材に「世界の果て 展」。同10月は大阪のSHELFにて、植物から繋がる縁を草の環で表現した「草の縁(ゆかり) 展」を開催。
 2017年6月には岐阜のhoshizumiにて開催した「この星に住む 展」での食事会は素晴らしかった。
 
 その間に、畑で野菜を作ったり、山麓や草むらにある豊かで美しい景色を見つめた。
 野に立って自然の近くで見える小さきものの何と大きいことかを感じ、どうすればこれをアートで表現できるかを考えた。
 
 
 
 十年目の決断
 
 十周年となる2018年は、各地で展示をしながら改めて新しい道に舵を切る時だった。
 1〜6月の間に名古屋、岡山、大阪、徳島、三重と慌ただしい十周年の展示をこなしながら、今の自分たちのやり方の違和感に真に向き合わなければならなくなった。次の十年をどうしたいのか。
 思い描く十年後の自分たちの姿に向かうには、今の選択では駄目だと気付いた。
 生活のために選ぶ仕方のない選択、自分自身ではなく人に合わせた選択、とかではなく自分たちが一番やりたいことや、大事にしたいことだけを選ばねば。
 
 10月の大阪のMASION GRAIN D'AILEでの「KiKusa 十周年記念展示第二部 森をつくる 展」は、その方向性を示す展示になった。前年から制作してきた新作の吊るす植物オブジェ「TURUSU」、それだけでつくる展示空間。
 これまでもずっとテーマにしてきた「いのち」のことを、この展示で本当の意味でアートとして少し表現できた気がした。
 
 
 
 一本の草が語れること
 
 2019年は、3月に奈良の秋篠の森・月草にて、サン・テグジュペリの「星の王子さま」を題材に子供心で何が大切かを見つける展示「KiKusa展 大切なものは目に見えないんだ」を開催。
 11月には岡山のCAFE DU GRACE 921GALLERYにて、過去最大数の吊るすオブジェ「TURUSU」を使った展示「KiKusa展 一本の花草に宇宙が見えるように宇宙にも一本の花草が見える」を開催。
 草花七万本の生命の燃焼を象るアート空間と、草屑のインスタレーションを展示。
 
 この春と秋の展示では、「一本の草は小さくても、一本の草で語れることは途方もなく大きい」ことを伝えることができた。
 思いや迷い、苦しみの中を手探りで進み続けてきたことも、美しい空間となって沢山の人の心を動かせるんだということが、自分たちのこれまでの仕事に明確な答えをくれた。
 
 
 
 宇宙観を思索して
 
 2020年は展示の開催ができない状況の中、ずっと思い続けてきた「植物が人の心のよりどころになる」ことをこの時代に届けることに集中することになった。
 5月には社会全体が自粛の中、初のWEB展示「KiKusa展 君を想うときわたしは木を植える」を開催。どちらかというと避けてきたWEBの世界で、植物の力をどこまで伝えられるかを試みた。
 続く6月は、民族的な植物文化を掘り起こしその美しい形を伝える「木草 水無月祓え2020」を発表。
 
 
 まだ見ぬ草や木の美しさを発掘して、野に咲く草のように大きな宇宙観を思索し続けている。
 
 
 
 
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 野の草花や山の木葉から生み出す作品の個展を全国で開催。
 KiKusaの作品の販売、受注会をWeb siteにて定期的に開催。
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 フィルムフォトグラフィに重点を置いた写真撮影、
 展示企画、DMデザイン、WEBデザイン、展示空間演出の全てを手掛ける。
 
 
 Artist
 堀之内 信哉    Shinya Horinouchi
 
 Assistant Artist
 堀之内 彩    Aya Horinouchi
 
 
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Contact
  
 
 kikusa@mctv.ne.jp
 
 
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